嶋屋喜兵衛商店

OSAKA . 2015

嶋屋喜兵衛商店は、住之江区安立商店街にある元庄屋の町家建築である。 明治時代に建てられた主屋や大正時代に建てられた蔵など5つの棟が中庭を中心として群を成している。ここをまちに開く複合的な店舗として蘇らせることを、私たちは「安立ひとつ屋根の下プロジェクト」と呼んでいる。 


安立商店街には、いまでも古いまち並みが残っている。しかし、その多くは看板やシャッターによって本来の姿が隠されている。嶋屋喜兵衛商店を構成する建築群も例外ではなかった。ところが、嶋屋喜兵衛商店では、シャッターの向こう側に想像以上に豊かな光景が残されていた。主屋の内部には圧倒的存在感の土間があり、格式のある座敷は庭へと繋がり、その先には風格のある蔵が存在していた。 


第一期では、南側の前面道路と中庭をつなぐアプローチを減築によって作り出し、「まちにひらく」ための第一歩を踏み出した。 商店街に面した東側の外観に変化はないが、南にまわると黒い重厚な焼杉の外観が現れ、中庭の奥にある蔵が前面道路から見えるようになっている。長らく閉ざされてきた豊かな空間性が垣間みえ、嶋屋喜兵衛商店の建築群がもつ建築的な魅力が感じられるようになった。 
これまで2年間の歳月を掛けてゆっくりと計画を進めてきた。今後も慌てることなく、段階的に改修工事をおこなっていく予定である。

 

嶋屋喜兵衛商店HP